「H.O.T」は2018年3月7日、前作「Guess Who?」から約1年5か月ぶりにリリースされた、2枚目のスタジオ・アルバム。
マスコットキャラクターであるナルバリくんのシルエットが描かれた、シンプルかつ力強いジャケットが一際目を引きます。
尚、今作でバンド初となる、オリコンウィークリーチャートでのトップ10入りを達成。
文字通り、彼らの出世作となった「H.O.T」を、活動休止中の今(!?)、改めて解説していきます。
※以下、敬称略
音楽的な振り幅を広げた「アガる」アルバム
特定のジャンルに捉われない楽曲群
今作「H.O.T」においても、前作「Guess Who?」同様、洋楽(特にUS)の影響を強く感じさせる楽曲が多数を占め、やはりJ-POPや邦楽ロックといった文脈からは遠い印象。
加えて、2010年代に隆盛を極めたHIPHOPのつんのめったビート感や、少ない音数で余白を楽しませるミニマムな楽曲にも挑戦しているため、音楽的な振り幅は広い。
しかし、その楽曲はいずれも前作以上に研ぎ澄まされており、(2025年現在)改めて聴いても途中でダレることなく、一枚を通してサラッと聴けてしまう。
(極めて個人的な意見ではあるが)
Nulbarichのキャリアにおいて
この「H.O.T」が最高傑作であると、ここに断言しよう。

バンド感が増したサウンド面
楽曲の大半が、DTMによる音の素材で構成された前作「Guess Who?」と比べると、「H.O.T」は生音(特にギター)の比重が明らかに大きい。
生の楽器でしか出せないような「歪み」や「揺らぎ」が随所に感じられるのだ。
これは恐らく、バンドメンバーによる演奏をそのまま採用したからであり、この時期にNulbarichが「JQ主導のプロジェクト」から「バンド」へと緩やかに形態変化していったからだと推測できる。
リリース当初のインタビューでは
「2017年の集大成の気持ち、この先のワクワク感がミックスされた」
作品であると言及。
こうした発言からも、当時の活動がいかに充実していたかが伺い知れる。
結果として、デジタルな音の素材と熱を帯びたバンドサウンドがDTMによって編集され、
同じ音場の中で等価に鳴らされている。
今でこそ珍しくもないが、2018年時点でそういった表現に果敢に挑んだという点においても「H.O.T」は稀有なアルバムと呼べるのかもしれない。

アルバムタイトルについて
アルバムタイトルである「H.O.T」とは、JQ曰く
「自分たちにとって今一番アツいアルバムという意味での「HOT」
そして「Hang On Tight」
つまり「(まだまだ先を目指すから)しっかりついて来てね」
という意味がかかっている、とのこと。
まさに「上のステージへ進んでいく」という決意表明のようなタイトルである。
(もしかすると、右肩上がりに人気を獲得していった自分達をさらに鼓舞する、といった役割も担っていたかも)
Nulbarich「H.O.T」おすすめの3曲
It’s Who We Are
FMラジオ局の月間ヘビーローテーションにも抜擢された、このアルバムを代表する楽曲。
とにかくイントロのギターが最高で、この部分が聴こえただけでアガる。
そうした反応を感じ取ってか、「It’s Who We Are」はライブで頻繁に演奏され、特に音楽フェスなどの舞台では、初めましてのオーディエンスを相手に圧巻のパフォーマンスを披露。
タイトル(直訳は「これが俺たちだ!」)が示す通り、Nulbarichがバンドであるということを世間に広く認知させた楽曲と言えるだろう。
Handcuffed
ミニマムで構築的なトラックがこの楽曲最大の特徴だ。
そのほとんどがシンプルなギターフレーズとそこに追従するドラムの反復によって構成されており、Justin Bieber「Love Yourself」やEd Sheeran「Thinking Out Loud」あたりを想起させる聴き心地の良さ。
Nulbarichのもう一つの側面である、JQの音楽への好奇心が反映された楽曲である。
ちなみに、武道館でのラストライブでも「Handcuffed」は披露されており、躍動感溢れるバンドアレンジで、駆け付けた観客を大いに楽しませた。
アウトロでのMC
「どうせ後で見返せるから、覚えてないくらい楽しんでってよ!」
が今でも涙を誘う。
Heart Like a Pool
このアルバムを締め括る楽曲となる「Heart Like a Pool」
その多幸感溢れるサウンドとは裏腹に、歌詞では初めてリスナーに曝け出したであろう、JQ自身の心境がべースになっており、プールをメタファーとして、自分の心の置き所や他人との関わり合いについて語られている。
だが正直、この楽曲だけを聴くのはあまりお勧めしない。初めて聴くなら尚更だ。
というのも、ここに至るまでの流れ/連なりが「Heart Like a Pool」を構成する要素のひとつだからである。
(少なくとも私はそう考えている)
是非、一度はアルバム一枚を通して聴いていただきたい。
そして最後にこの「Heart Like a Pool」に辿り着いて欲しいのだ。
Nulbarich「H.O.T」TrackList
01. H.O.T
02. It’s Who We Are
03. Almost There
04. Zero Gravity
05. Handcuffed
06. In Your Pocket
07. See You Later
08. Supernova
09. ain’t on the map yet
10. Follow Me
11. Spellbound
12. Construction
13. Heart Like a Pool
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