今さら振り返るNulbarich③なぜこうなった?「Blank Envelope」アルバム考察

楽曲レビュー

Blank Envelope」は、Nulbarichが2019年2月にリリースした、3枚目フルアルバムです。

2018年11月には、初の日本武道館単独公演を成功。
2019年12月にさいたまスーパーアリーナでの単独公演を控えたタイミングでのリリースであり、キャリアの絶頂期を迎えた彼等の集大成的な作品となっています。

しかし、驚かされたのはその音楽性にではなく、これまでとは全く違うアプローチによるジャケットデザインでした。

なにせ

ここからの…

こうですから。

私も初めてこのジャケットを見た時、「なんでやねん!?」と思ったものです。

しかし、このジャケットを含むアートワークを手掛けたのは長場雄氏。
Nulbarich公式キャラクター「ナルバリ君」を世に送り出した張本人です。
(最近ではUNIQLOとのコラボスウェットが話題になりましたね)

そんな彼がなんの考えも無しに、このイラストをアルバムジャケットにするとは考えられない。
何か意図があるはず…!

この記事では、そんなジャケットの謎を考察しながら、この「Blank Envelope」を私がどのように受け取ったのかを書いていこうと思います。

※以下、敬称略

「Blank Envelope」概要

タイトルについて

Blank Envelope」は直訳すると「空の封筒」だが、彼等は「宛名のない封筒」
という意味合いで名付けたという。

当時のインタビューで、フロントマンであるJQ

「今回の曲は特定の誰かに宛てたものというより、いま自分が思ってることを基盤にしているので、〈好きにしちゃって〉という意味があって。」

と語っており、受け取った人がどう解釈してもいい「余白」をコンセプトに据えた作品であることが窺える。

収録楽曲について

収録されている楽曲はシングル3曲とインスト2曲を含む全13曲

それぞれテイストは違うものの、全体のトーンは整えられており、派手さはないが良曲揃いといった印象を受ける。

曲の並びも、これまでの2作品と比べるとそれほど意識的ではないように感じられ、構成で聴かせるいうこともないので、ある意味サラッと聞き流せてしまう。

しかし、ジャズファンク、果てはトラップの要素を取り入れたトラックに耳を澄ませば、その緻密かつ大胆なディテールに驚かされることが多く、聴くほどに新しい発見がある。

このことから、BGM的な聞き方ができそうなほど耳馴染みが良い一方で、聴き込み甲斐のある作品であるとも言えるだろう。

「Blank Envelope」ジャケット考察

「あの」イラストの正体

当時のインタビュー記事によれば、長場雄が描いたイラストの引用元は、18世紀に活躍したスペインの画家、ゴヤの作品とのこと。

ジャケットは「我が子を食らうサトゥルヌス」という名の絵画であることが判明した。

つまり

これは…

こうだということになる。
なるほど、見事な漂白っぷり。
ディフォルメの極致と言ってもいいだろう。

ゴヤ「我が子を食らうサトゥルヌス」について

ゴヤは宮廷画家として名を馳せた人物で、最後のオールド・マスター(18世紀以前のヨーロッパにおける優れた画家)として広く知られている。

この絵画は宮廷画家としてのキャリアを終えた後、自宅の壁に描いた(!)作品で、彼の内面の不安や社会の絶望的な状況を、神のおぞましい場面に落とし込んだという説が有力だ。

しかし、どういった意図があったのかを周りに語ることなくこの世を去ってしまったため、どの説も推測の域を超えることはできず、この絵画の解釈に正解はない

つまり、鑑賞した人が自由な感想を抱いていい作品なのである。

なぜこの絵を選んだのか

長場雄は「何が描かれているのか」ではなく、絵画自体の立ち位置に共通項を見出したのではないだろうか。

つまり「楽しみ方や感想は聴き手の自由」というアルバムコンセプトメタファー(隠喩)として、この「我が子を食らうサトゥルヌス」を選んだのではないか。

それをカジュアルなタッチでディフォルメすることで、楽曲群の表層的な面である耳馴染みの良さを表し、引用元である絵画の細部まで描かれた実態を以てして、楽曲の緻密な作り込みを表現しているのだとしたら…

このアートワークでしか成立しないんじゃないかと思えてきた。

私は「Blank Envelope」をこう受け取った

記名性の高い絵画は、遠くから眺めるだけでそれと分かる存在感がある。
見る人によっては、それだけで満足する場合もあるだろう。

しかし、ひとたび近づいてみれば、その筆致や色遣い、背景など細かい部分に気付き、遠くからではわかり得なかった「深さ」を知ることになる。

NulbarichBlank Envelope」は、そんな親密さ深さを持つアルバムだ。

一聴すればわかる独特のフレーズサウンドの中に、音楽的挑戦の数々が散りばめられた楽曲たちが、特段主張するでもなく、ただそこで鳴っている。そんな感じ。

興味深いが無視できる

かつてBrian Enoは、アンビエント・ミュージックを指してこう発言したという。
その意味を、ほんの少し理解できたような気がした。

「Blank Envelope」TrackList

01. Blank Envelope (Intro)
02. VOICE
03. Silent Wonderland
04. All to Myself
05. JUICE
06. Sweet and Sour
07. Kiss You Back
08. Toy Plane
09. Ring Ring Ring
10. Focus On Me
11. Super Sonic
12. Stop Us Dreaming
13. I’m Home(Outro)

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました